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2025年6月3日(水)

脱出

 今、世界中で話題の人達がいる。彼らは惑星ユーファリアから奇跡的な脱出を試みそれに成功した人達である。当時、ユーフォリアにある日本基地では地下資源探査と採掘が行われており、彼らはそこの技術者達だった。ところが想定外の電磁気嵐に襲われて電子機器がことごとく破壊されてしまった。通信機器は全く役に立たない状態だった。生き残った仲間たちは緊急避難棟へ身を寄せていた。地球へ帰還するためのロケットはもちろん破損しているし、地球との交信もできない状態だった。ただ酸素製造機と発電機だけは無事だった。地下1000メートルのところに設置されていたからだろう。

 「ここで何が起こったのか地球では情報を得ていないだろう。自分たちはどうなるんだろう。」と残された誰もが思った。

 その時だった。一人の男が立ち上がって言った。技術者達のリーダーだった。

「地球に連絡しよう。そして地球に救援を頼もう。」

 すると誰かが言った。

 「ここには無線機なんてない。みんな壊されてしまった。あるのは金属クズだけだ。」

 リーダーは言った。

 「大丈夫。みんなが協力してくれれば何とかなると思う。」

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インタビュアー:そんな状態でどうやって地球と連絡を取ったんですか。

技術者    :それまで使っていた通信機器が全部破壊されたので新しい無線機を作りました。

インタビュアー:部品はあったんですか。

技術者    :保管してあった電子素材はことごとく破損していました。

インタビュアー:じゃあどうやったんですか。

技術者    :無線機の主要な部分は電波発信回路なんです。そしてあとは抵抗とコンデンサーとコイルさえあれば無線機が組み立てられます。

インタビュアー:でも半導体はどうしたんですか。これが一番肝心でしょう?

技術者    :真空管で代用したんです。ヒーターを巻いてフイラメントを作りました。これが陰極です。その周りに薄い鉄板で陽極を作りました。陰極と陽極の間にもう1枚金属を入れてこれが制御端子です。一番簡単ですがこれで3極管ができました。あとは同じようにして5極管を多数作って抵抗やコンデンサーなどの部品とつなげて完成です。

インタビュアー:すごいですね。あなた一人で全部作ったんですか。

技術者    :いえ、幸いそれぞれの材料に詳しい人がいて手伝ってくれたんです。それでうまくいきました。

インタビュアー:でも真空管はガラス管でおおって中を真空にしないといけないんじゃないですか。真空管っていうくらいだから・・・。

技術者    :僕たちは惑星で作業する時はいつも宇宙服を着ていました。僕らがいたのは空気も何もない全くの真空状態の星だったんです。だからガラス管は必要はなかったんです。

インタビュアー:まるでロビンソン・クルーソーみたいなお話ですね。

技術者    :ええ、僕たちもそう思っています。

(注)

 本作品は作者の創作によるフィクションであり、現実に存在するものとは全く関係ありません。

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