ANR(全日本鉄道株式会社)社長 〇〇〇〇〇様
突然のお便りで失礼致します。 どうしても社長様に聞いていただきたくこうしてお手紙を差し上げました。 ご多忙の中、大変お手数かとは思いますがよろしくお願いします。
私の住んでいる○○○県○○○市には交通公園というのがあります。そこの一角に本物のSLが展示してあります。残念ながら屋根がないので風雨にさらされっぱなしです。私は近所に住んでいますが、毎夕方散歩やジョギングでそこを通るたびに気になっていました。ごつごつした鉄の表面など見ているとまるで「錆びた刀剣」のようでした。いつしか私はこのSLはどういう状態にあるのがベストなのだろうと考えるようになりました。結論は至ってシンプルで「動くものは動いている時がベストなのだ。」と思い至りました。私なりの悟りというか結論でした。そこでこのSLがもし稼働可能な状態にあるとしてそのためにはどうしたらいいか、どうなるかを考えました。結論は「SLランド」の建設でした。
SLランドの主な仕様
1できれば北海道かかなり広い場所に大きながかりなSLランドという施設を作ります
2 そこには全国から稼働可能なSLを可能な限り集めます。
3 夏はできるだけ多くのSLをできるだけ長い期間走らせます。
4 煤煙対策として線路の沿線には太陽光発電の電力で動く空気浄化装置を大量に設置します。
5 冬の間は機関車や各車両などの点検・整備を行います。
6 SLランドでは日本中に残っているSLのほとんどを見ることができます。
7 SLランドを新たな観光資源として活用することでANRの収入を増やしそれを日本中の鉄道環境の整備・維持・発展のために使うことができます。
8と水で動力を得るSLは今では古いタイプの乗り物になります。 しかしSLには他の乗り物には代えがたい魅力があると思います。 熱心なファンも多く特に子供達が喜ぶと思われます。
9 SL及びSLの文化は現状のままでは滅びる一方です。 逆に、眠っているSLを再度稼働させることができれば人類史上においても有意義な仕事になると思われます。
10 旧型のSLの保守・点検だけでなく新しいタイプのSLの研究も行います。ここでは各種センサーやコンピューターを駆使してSLの燃焼効率を最大限に高める研究を行います。さらに石炭、木材、石油、天然ガス、さらには燃える物なら何でも燃料として使えるSLも研究、開発します。おそらく想像を超えるような新しいSLも誕生するはずです。
11 SLは公園の片隅でひっそり眠っているのは本来の姿ではないと私は思います。動くものは動いていてこそ最も美しいのではないでしょうか。
〇〇〇〇〇
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〇〇〇〇〇様
平素よりANRをご利用いただきまして誠にありがとうございます。
このたびは貴重なご意見を賜りましてありがとうございます。
SLランド建設についてご提案いただきましたが、現在、当社の経営状況は極めて厳しく、「安全な鉄道サービス」を持続的に維持するための費用の確保を最優先とし、地域の皆様に対し「持続可能な交通体系の在り方」についてご相談させていただきたいと考えているところです。
SLランド建設などのアイデアを実現する資金の余裕は弊社にはございませんが、お客様の貴重なご意見は今後の事業展開において参考とさせていただきます。
引き続きANRをご利用いただきますようよろしくお願い申し上げまして、弊社からの回答とさせていただきます。
令和〇年〇月〇日 ANR株式会社 社長 〇〇〇〇〇
(後日譚)
「僕は決心したよ。SLランドは僕が必ず作るからね!」と毎日公園の周りをジョギングしながら私はSLに話しかけている。
本作品は作者の創作によるフィクションであり、現実に存在するものとは全く関係ありません。
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